他者との対話
古代ギリシャの偉大な哲学者ソクラテスは「私が知っていることは、私は何も知らないということだ」と言い、真理に到達する手段として他者との対話を続けました。これが哲学の始まりであり、対話こそが真理に到達する唯一の方法なのです。ビジネスにおいても人生においても、真理を知ることで思うがままの世界を創造することができます。
また、ソクラテスは「世界を動かそうと思ったら、まず自分自身を動かせ」とも言っています。唯一の成功法則は、行動することです。行動しなければ何一つ変わりません。しかし人生の時間には限りがあります。闇雲に行動していては命がいくつあっても足りません。
そこで、ソクラテスが「汝自らを知れ」と言ったように、まず「自分は何者なのか」を知ることからすべてが始まります。自分は何のために生まれてきて、本当は何がしたいのか?それはなぜなのか?本当の自分を知るためにも、他者との対話を繰り返すことが、思うがままの世界を創造する第一歩になります。
哲学対話コミュニティとは?
哲学対話コミュニティとは、4名~5名のグループ(zoomのブレイクアウトルーム)に分かれ、その時に決められたテーマについて一人ひとりが語り合います。価値観や信念、その時に感じたことや思いついたことを語り合い、他者の視座・視点に触れながら多くの気づきを得て考えを深めていきます。
哲学対話の流れ
哲学対話の進行は、各グループから選出された一名のファシリテーターによって行われます。もちろんファシリテーターも一参加者として対話に加わります。
STEP1:問い出し
ファシリテーターが参加者を指名して、1人につき1つずつ深く語り合いたいテーマを挙げていただきます。ファシリテーターはそれらを記録し、次のステップで多数決をとります。
テーマの例としては、「本当の愛とは?」「何をもって家族と呼べるのか?」「友情とは?」「お金とは?」「生きる目的とは?」「正義とは?」など大きな哲学的テーマから、身近にある個人的な小さなテーマまでさまざまです。
STEP2:問い決め
さきほど挙げられた各テーマから、今回語り合う一つのテーマを多数決で決定します。参加者には、自分が挙げたテーマ以外に1回だけ挙手していただき、最も多かったテーマで哲学対話をスタートします。もし選ばれなかったとしても、また次回参加して再度同じテーマを挙げることをおすすめします。
STEP3:哲学対話スタート
発言したい参加者には挙手していただきます。そしてファシリテーターが指名した方のみご発言できます。哲学対話は「おしゃべり」とは異なり、ルールがありますので後程ご説明いたします。また、全員にご発言の場面をつくるため、お一人あたりのご発言時間は約2分以内でお願いしています。
哲学対話のルール
哲学対話は「おしゃべり」でもなければ「討論」でもありません。愚痴をこぼしてストレスを発散する目的でもありません。誰もが一人ひとりが違った世界に生きています。同じ世界に生きている人はいません。だからこそ、自分以外の世界に触れることで気づきや学びが得られます(だからこそ、ソクラテスは対話を「真理に到達する方法」と表現したのです)。
そしてこの独特な対話をスムーズに進行するためにはルールが必要になります。とはいえ、難しいルールではありません。ファシリテーターはこのルールが守られるように哲学対話を進行します。
ルール①安全安心の場づくりを心掛ける
哲学対話はお互いの意見をぶつけ合い、正解を導き出すための討論ではありません。すべてが正解なのです。そのため、他者の発言を否定せずに受け止めることがルールとして定められています。
また、発言する参加者は一切否定されることがありませんので、何を話してもOKです(ただしルール②を遵守)。テーマについて、人生の中で築き上げてきた価値観や信念を語らうこともOKです。逆にその場の思いつきで話してもOKです。途中で意見が変わってもOKです。話がまとまっていなくてもOKです。
そして、話さなくてもOKです(沈黙も哲学対話の醍醐味なので、ファシリテーターにご発言を促されても「今はまだ考えたいです」と沈黙することもOKです)
ルール②ストレス発散に利用しない
愚痴をこぼしたり、不平不満をもらしたり、怒りをぶつけたり、哲学対話をストレス発散に利用してはいけません。哲学対話とは、テーマについて深く考え、真理に近づこうとしながら、他者の考えに触れることで無意識だった部分に光を当て、気づき、学び、変化といった反応を楽しむ目的も含まれています。
哲学的な思考(当たり前を疑い、本当を見つけようとする姿勢)で、より建設的な方向に対話が進み、参加者すべてにとって有意義な時間にすることが好ましいです。
ルール③発言できる人は常に一人だけ
このルールによって哲学対話は「おしゃべり」と一線を画しています。発言できる参加者は常にファシリテーターによって指名された方のみです。その方が発言している間、他の参加者は発言できません(相槌はOKですが、質問したり会話に割り込むことはNGです)。
つまり誰かが発言している間、他の参加者は傾聴しつつ、(発言できないため)半強制的に自分の考えを熟成する時間を与えられることになります。他者からの情報を取り込みながら「自己対話」するのです。
また、全員に発言の場面が与えられるよう、ご発言のお時間はお一人一回当たり約2分以内としています。
④答えは出なくてもいい、問いを持ち帰る
こちらはルールというよりもマインドセットです。本当の哲学対話は、哲学対話が終わってから始まります。もともと哲学とは、簡単には答えの出ないテーマと向き合う取り組みです。哲学対話で自分の意見を表明しつつ、他者の意見を取り込むことで考えがより深まり、その場ではスッキリとした結論には至らず、良い意味で「モヤモヤ」をお持ち帰りいただくことも少なくありません(これが病みつきになる方も続出しています)。
哲学とはギリシア語の「philosophia」が語源であり、ソクラテスが使い始めた言葉です。その意味は「知を愛すること」。あなたも哲学対話を通して知を愛し続けませんか?
ファシリテーターの役割
ここではファシリテーターの役割についても簡単に触れておきます。
役割①全員がご発言できるようにご指名を
挙手された方を指名してご発言いただきますが、偏りのないようにお願いします。しばらくご発言されていない方にもご指名ください(ただし、指名されても発言するかどうかは本人の自由です)。
役割②ルールが守られるようにご配慮を
もし誰かを否定するご発言があった場合、本人にご指摘ください。ご発言が長すぎる場合は「他の方にもご発言を」とお声かけして時間配分にもご配慮ください。その他ルール違反があった場合も命令するのではなく、ご協力いただけるようお声かけください。
役割③自由に発言できる雰囲気づくりを
「感じたままで大丈夫ですよ」「まとまらなくても大丈夫ですよ」など、何でも自由に話せる雰囲気にリードしてください。
④ご自身も参加者の一人としてご発言を
ファシリテーターも貴重な参加者のお一人です。他の参加者同様にご発言の機会を作ってください。
哲学対話で得られること
安心安全の場
あなたの目の前に、何を言っても、どんなことをしても、一切否定されることなく受け容れてくれて、すべてを余すところなく認めてくれる存在がいたら、あなたはどんな気持ちになるでしょう?
人は安全安心な場所にいると、挑戦する意思が芽生えてきます。まずは閉ざされた意識から解放されて、無意識に気づこうという挑戦が始まります。「今まで考えたことがなかったけど・・・」と、自由な発想が次々と展開するようになります。
無意識の意識化
無意識は意識できないからこそ無意識なのです。だからこそ、通常の心理状態では無意識を意識することはできません。しかし、安全安心な場にいることでこれまでの思考に挑戦する意思が芽生え、自由な発想が展開し始めた時、初めて無意識に触れることができます。
「アイデアのつくり方」という書籍を執筆したジェームス・ウェブ・ヤングは、「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と記しています。自由な発想とは、意識できていることを掛け合わせることで無意識にアクセスすることです。そして、意識できていることを掛け合わせる手段こそ、問いかけです。
イノベーション
ネイティブ・アメリカンのことわざに「問いを持った部族は生き残ったが、答えを持った部族は滅びた」というものがあります。学校教育のせいかどうかは分かりませんが、常に人は答えを欲しがっています。もちろん答えは必要です。答えによってさまざまな問題が解決できます。
しかし本当に必要なものは、問いかけです。そして、問いかけをやめないことです。問いかけ続けることで、やがて通ったことのない道が現れてきます。これまでに考えたことがなかった問いかけに遭遇した時、イノベーションが起こります。無意識が意識化される瞬間ですね。
哲学対話コミュニティに参加しませんか?
哲学対話は毎月第三木曜日13時~14時@zoomで開催しております。私が主催しているティーアップ実践会の会員は参加費無料、非会員は参加費1000円(税込)です。
何か分からないことやご質問がありましたら下記お問い合わせフォームからメッセージを送信してください。参加申込も下記お問い合わせフォームからよろしくお願いいたします(^^♪